「自社製品は日本製だからEARは関係ない」と思っていませんか。実はそうではない場合があります。この記事では、日本の輸出管理担当者がEARについて最低限知っておくべき内容を解説します。
EARとは何か
EARとは、米国商務省産業安全保障局(BIS)が所管する輸出管理規則(Export Administration Regulations)です。根拠法は2018年に制定された輸出管理改革法(ECRA)です。
EARの最大の特徴は域外適用です。米国外で製造された製品であっても、一定以上の米国原産品・技術・ソフトウェアが含まれている場合、EARの規制対象になります。日本企業が日本国内で製造した製品でも、条件次第でEARが適用されます。
なぜ日本企業に関係するか
日本企業がEARを意識すべき場面は主に3つです。
米国から輸入した製品・部品を自社製品に組み込んで第三国に輸出する場合
米国原産のソフトウェア・技術を使って製造した製品を輸出する場合
米国製品を仕入れて再輸出する場合
これらに該当する場合、外為法の許可とは別にEARへの対応が必要になる可能性があります。
CCLとEAR99
EARの規制対象品目は規制品目リスト(CCL:Commerce Control List)に掲載されており、品目ごとに規制品目分類番号(ECCN)が割り当てられています。CCLに掲載されていないEAR対象品目は「EAR99」に分類されます。EAR99は原則として輸出許可不要ですが、制裁対象国やエンティティリスト掲載者向けの場合は許可が必要になります。
デミニミスルール(De Minimis Rule)
日本製品にEARが適用されるかどうかの判断に関わる重要なルールです。米国原産品の組み込み比率が一定の割合(デミニミス値)以下であれば、EARの規制対象外になります。
CISTECの資料で確認できたデミニミス値は以下の通りです。
| 再輸出先 | デミニミス値 |
|---|---|
| テロ支援国(イラン・シリア・北朝鮮)、キューバ | 10%超でEAR対象 |
| 上記以外の国 | 25%超でEAR対象 |
比率が0%、つまり米国原産品を一切使用していない場合は対象外です。なお比率の計算方法は仕向地や品目によって異なるため、詳細はBISの公表情報もしくは経済産業省のEAR関連情報で確認してください。
エンティティリスト(Entity List)
BISが公表する懸念企業・機関のリストです。掲載された事業体に対してEAR対象品目を輸出・再輸出する場合はBISの許可が必要で、多くの場合「原則不許可」の方針が適用されます。日本の外国ユーザーリスト(EUL)に近い位置づけですが、ELは随時更新されるため取引前に必ず確認が必要です。
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みなし再輸出(Deemed Reexport)
EARにも外為法と同様の「みなし輸出」概念があります。日本国内であっても、外国籍かつ日本の永住権を持たない従業員にEAR対象技術を開示する行為は、その従業員の国籍国への「みなし再輸出」になる可能性があります。工場見学や技術説明会での説明も該当しうる点は、外為法のみなし輸出と同様です。
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自社での確認手順(ECCNの判定方法)
BIS(米国商務省産業安全保障局)の公式サイトでは、ECCNの確認方法として次の3つが案内されています。
| 方法 | 内容 |
|---|---|
| メーカーに確認 | 米国製の部品・ソフトウェアを購入している場合、製造元がECCNを把握していることが多い |
| 自己判定 | CCL(規制品目リスト)の「Order of Review」という手順に沿って、自社製品の技術仕様とCCLの記述を照合する |
| BISへ正式に照会 | 自己判定で確定できない場合、SNAP-RというオンラインシステムでBISに公式な分類を申請できる |
自己判定を行う場合は、製品の技術仕様を正確に理解していることと、CCLの構成(カテゴリー・製品グループ・数字の意味)を理解していることが前提になります。
違反した場合の罰則
EAR違反の罰則は、2018年の輸出管理改革法(ECRA)により定められています。
| 種別 | 内容 |
|---|---|
| 刑事罰 | 20年以下の懲役、および/または違反1件あたり100万ドル以下の罰金 |
| 民事罰(課徴金) | 違反1件あたり30万ドル以下、または対象取引価格の2倍のいずれか高い方 |
| その他の措置 | EAR対象取引の禁止(事実上、米国が関わる取引ができなくなる) |
罰則以上に実務上重いのは「その他の措置」です。一度違反が認定されると、米国原産品・技術を扱う取引そのものから排除される可能性があります。
外為法との関係
EARと外為法は別の法律で、それぞれ独立して対応が必要です。外為法で許可が不要でも、EARで許可が必要な場合があります。逆もあります。両方を確認する習慣が必要です。
まとめ
- EARは域外適用される規則で、日本国内で製造した製品でも米国原産品・技術の含有度によっては対象になる
- 対象かどうかの確認は、ECCNの判定(メーカー確認→自己判定→BISへの照会)から始まる
- デミニミス値(原則25%、テロ支援国等向けは10%)を超えると、日本製品でもEARの対象になりうる
- 違反時は刑事罰(最大20年の懲役)・民事罰(最大30万ドルまたは取引額の2倍)に加え、米国関連取引からの事実上の排除という措置がある
- 外為法とEARは別の法律のため、両方を個別に確認する必要がある
詳細は以下のリンクで確認してください。
(外部リンク:CISTEC EAR概要資料 )
(外部リンク:経済産業省 EAR関連情報 )
関連書籍
より体系的にEARを学びたい方は、CISTEC発行の実務書もあります。

米国輸出管理法と再輸出規制実務
※本記事の内容は2026年6月時点の情報に基づきます。EARは頻繁に改正されるため、実際の判断は必ずBISの最新の公表情報をご確認ください。


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