これまでに、リスト規制と該非判定の基本を解説しました。判定の進め方は理解できても、実務では見落としやすい落とし穴があります。経済産業省やCISTECが繰り返し注意喚起しているポイントを4つにまとめます。
落とし穴1:項目名だけで判断する
「リストに自社製品の名前が出てきた=該当」という思い込みが、最も多い誤りの一つです。
リスト規制は項目名だけでなく、スペック(性能・数値)が規制の閾値を超えるかどうかで判定が分かれます。名前が一致しても、スペックが基準値を下回れば非該当になります。逆に名前が一致しなくても、スペックが基準を超えれば該当します。
判定は「項目名の一致」ではなく「スペック条件を満たすか」で行う必要があります。ガラス繊維の例は記事3で解説しています。
落とし穴2:法令上の名称と一般名称のズレ
輸出令別表第1やマトリクス表に記載されている名称は、現場で使われる一般名称と異なることがあります。一般名称でマトリクス表を検索しても「該当なし」と思い込んでしまうのがこの落とし穴です。
経産省が公表している読替が必要な用語の例:
| 法令上の名称 | 一般的に使われる名称の例 |
|---|---|
| アビオニクス装置 | GPS |
| 工作機械 | マシニングセンター、マシンツール |
| 軸受 | ベアリング |
| 電子計算機 | コンピュータ |
| 無人航空機 | UAV、ドローン、マルチコプター |
| 炭素繊維 | カーボンファイバー |
| 集積回路 | IC |
マトリクス表では法令上の名称だけでなく、類義語・一般名称でも検索する習慣をつけることが重要です。経産省はマトリクス表の検索で使える読替語一覧を公表しています。
(外部リンク:経産省マトリクス表 )
落とし穴3:部分品・附属品の見落とし
装置本体が非該当だからといって、その部分品・附属品まで安全とは限りません。貨物等省令では、装置本体とは別に部分品・附属品が規制対象として規定されているケースがあります。
実務でも、装置を輸出しようとしたときに本体は非該当だったが内部部品がリスト規制に該当したというケースがあります。この場合、部分品特例の条件を満たせば許可申請不要で対応できる場合があります。ただし部分品特例が適用できるかどうかは条件を確認する必要があります。
該非判定の際は本体だけでなく、貨物等省令で部分品・附属品の規定があるかを必ず確認してください。
落とし穴4:複数項番での規制
1つの貨物が複数の項番で規制される場合があります。1つの項番を確認して非該当だったからといって、他の項番での該当可能性を見落とすのがこの落とし穴です。
複数項番で規制される貨物の例:
- 炭素繊維:2の項、4の項、5の項、13の項
- 工作機械:2の項、6の項
- 集積回路:7の項、9の項
マトリクス表で検索したときに複数の項番がヒットした場合は、すべての項番について該非判定を行う必要があります。1つの項番で非該当だったとしても、別の項番で該当する可能性があります。
メーカーの判定書を鵜呑みにしない
メーカーから該非判定書を取得して確認することは有効な実務手順ですが、その判定書を鵜呑みにするのは危険です。
外為法上の責任は輸出者が負います。メーカーの判定書に誤りがあっても、輸出者が違反を問われます。判定書はあくまで参考情報として扱い、内容を自社で確認する習慣が必要です。
判断に迷う場合は、CISTECの該非判定支援サービスや経産省の相談窓口を活用してください。
(外部リンク:CISTEC 該非判定基礎講座 )
まとめ
該非判定の落とし穴は、いずれも「確認が不十分」から生じます。
- スペックが閾値を超えるかどうかで判定する
- 法令上の名称と一般名称のズレを意識して検索する
- 部分品・附属品も貨物等省令で確認する
- 複数項番のすべてを確認する
- メーカーの判定書は参考情報として自社で再確認する
該非判定は輸出者の責任で行うものです。疑問があれば自己判断せず、一次資料と専門家に当たる習慣が事故防止の基本です。
※本記事の内容は2026年6月時点の法令に基づきます。輸出管理関連の法令は頻繁に改正されるため、実際の判断は必ず最新の法令および経済産業省の公表情報をご確認ください。


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