以前、「海外の取引先に図面をメールで送る、海外拠点で技術指導をする行為も規制対象」と触れました。ただし規制対象はそれだけではありません。日本国内での技術提供も、相手によっては規制対象になります。これが「みなし輸出」です。
みなし輸出とは何か
通常、輸出管理というと「モノや技術を海外に送り出す行為」をイメージします。しかし外為法では、日本国内であっても、非居住者に規制対象の技術を提供する行為を「技術の輸出」とみなし、規制の対象としています。これをみなし輸出と呼びます。
非居住者は最終的に出国する蓋然性が高く、その際に技術情報を持ち出す可能性があるためです。「国内での提供だから問題ない」という思い込みが、意図せぬ法令違反につながることがあります。
居住者・非居住者とは
みなし輸出を理解するには、居住者と非居住者の区別が前提になります。
ポイントは国籍ではなく滞在状況で判断することです。外国人であっても日本に入国後6ヶ月以上経過していれば居住者として扱われます。逆に日本人であっても海外の事務所に勤務する目的で出国し外国に滞在している場合は非居住者になります。
主な区分の例:
- 日本に勤務する外国人(入国後6ヶ月以上)→ 居住者
- 海外駐在中の日本人 → 非居住者
- 来日直後の外国人研究者(6ヶ月未満)→ 非居住者
- 外国法人の日本支店 → 居住者
非居住者への規制対象技術の提供には、原則として経済産業大臣の許可が必要です。
特定類型とは
2022年5月の運用明確化により、居住者であっても非居住者から強い影響を受けている状態(特定類型)に該当する場合は、みなし輸出管理の対象であることが明確化されました。
特定類型は3つあります。
類型①:雇用契約等の契約に基づき、外国政府・外国法人等の支配下にある者。例えばグループ会社以外の外国企業と兼業している日本の企業の従業員などが該当します。
類型②:経済的利益に基づき、外国政府等の実質的な支配下にある者。例えば外国政府から留学資金の提供を受けている学生などが該当します。
類型③:国内において外国政府等の指示の下で行動する者。
ただし特定類型に該当するからといって、安全保障上懸念がある者とみなされるわけではありません。個別に審査で確認する必要があります。
実務でどう対応するか
みなし輸出が問題になりやすい場面は主に3つあります。
1つ目は研究報告会・技術討議です。非居住者が参加する社内の研究報告会や技術討議では、提供する情報が規制対象技術に該当しないかを事前に確認する必要があります。誰でも参加できる公開の学会発表であれば公知の技術として許可不要ですが、社内の未公開技術が含まれる場合は審査が必要です。非居住者が参加者に含まれる報告会では、提供予定の技術情報を事前に確認する運用が現実的です。
2つ目は工場見学です。「見学だから問題ない」と思いがちですが、工場内にリスト規制に該当する設備(例:特定の成形機など)がある場合、見学させること自体が技術提供とみなされる可能性があります。見学者の属性(居住者か非居住者か)を事前に確認し、規制対象設備を含む区域への立ち入りを制限する対応が必要です。
3つ目はメール・資料の送付です。技術情報を含む資料を非居住者にメールで送る行為も規制対象になりえます。送付先が非居住者かどうかを確認する習慣が重要です。
まとめ
みなし輸出は、日本国内での技術提供であっても規制対象になるという、見落としやすい論点です。
- 国内での非居住者への技術提供は「技術の輸出」とみなされる
- 居住者・非居住者の区別は国籍ではなく滞在状況で判断する
- 2022年以降、特定類型に該当する居住者への提供も規制対象
- 研究報告会・工場見学・メール送付など、日常業務の中に規制対象の行為が潜む
「海外に送らなければ問題ない」という思い込みを持たず、相手が非居住者かどうかを常に意識することが、みなし輸出対応の基本です。
※本記事の内容は2026年6月時点の法令に基づきます。輸出管理関連の法令は頻繁に改正されるため、実際の判断は必ず最新の法令および経済産業省の公表情報をご確認ください。


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